"絆" KIZUNA プロジェクト 2017 報告


 
Peace Field Japan は、2017年も8月に"絆" KIZUNA プロジェクトを行いました。イスラエル、日本、パレスチナの青少年が、人と自然との調和や共生の精神を受け継ぐ里山の暮らしや伝統文化にふれる体験を共有することで、互いを理解し、絆を築くとともに持続可能な社会をつくるために何ができるのかを一緒に考える場を提供しました。

プログラム概要


1)参加者:
イスラエルの高校生女子4名、指導者1名
パレスチナ(西岸)の高校生女子4名、指導者1名
日本の19-20才の女子4名
 
2)開催地:山梨県北杜市、小菅村、東京都内
 
3)プログラム概要
●期 間: 8月8日 ~ 22日
●場 所:山梨県北杜市、小菅村、東京都内
●参加者 :イスラエル、日本、パレスチナの高校生、大学生女子各4人(計12人)
●主 催: 特定非営利活動法人 Peace Field Japan
●助 成: 一般社団法人東京倶楽部 公益財団法人三菱UFJ国際財団
●協 力: 公益財団法人キープ協会
●後 援: 外務省、文部科学省、イスラエル大使館、パレスチナ常駐総代表部、小菅村役場、小菅村教育委員会
●協 賛: 横浜南ロータリークラブ、(有) アオキエアコンディショニング、ネタフィムジャパン株式会社  
●物品協賛: 川崎ロータリークラブ、株式会社東あられ本舗、アリサンオーガニックセンター、インド&パキスタンレストランスルターン、堂本製菓株式会社、株式会社はくばく、株式会社良品計画、横浜瀬谷ロータリークラブ
●ご寄付(KIZUNAサポーター): 太田和代さん、大橋俊弘さん、川﨑智晴さん、岸厚子さん、久米真浩さん、櫻井友さん、桜井裕子さん、颯田裕彦さん、下田小百合さん、白川正孝さん、杉浦武胤さん、鈴鹿規子さん、鈴木康昭さん、高谷健一さん、田中麻紀さん、野渡和義さん、長谷川成人さん、藤井薫さん、水谷透さん、森村智恵子さん
●物品ご寄付:阿部功・登美子さん、井上研一さん、井上善徳さん、太田敦之さん、大久保博続さん、鹿沼正さん、櫻井友さん、渋沢伸二さん、関根由紀夫さん、高木バットシェバ・佳男さん、高岸英行さん、長岡和子さん、中澤美弥子さん、中澤幸枝さん、村橋克雄・静子さん、山田勝彦さん、山田哲夫さん、吉田富枝さん 
●ご協力いただいた方々
・キープ協会:浦壁真琴さん、小西貴士さん、石川昌稔さん
・小菅村:教育委員会:佐藤誠さん、源流振興課:守重絵梨子さん、中川徹さん、小菅中学校の教職員のみなさま
林業廃棄物センター:細川雅之さん
長作地区:守重市平さん、守重敏夫さん、守重廣子さん、大野康平さん、大野寛子さん
NPO法人多摩源流こすげ: 鈴木一穂さん、寺田寛さん、福本美穂さん、James Hanlonさん               
ホストファミリー:青柳ツヤさん、木下繁治さん、露木セツ子さん、村上伸哉さん 
多摩川源流大学
・その他:齋藤伸介さん、櫻井友さん、岡嶋直道さん、岸健太朗さん、鈴木悠人さん
●ボランティアスタッフ:伊藤匠海、池川尚之、石橋真里奈、上田弥美、浦崎笑子、大野彩華、川北真以、加藤明花、小島はるか、小林琴里、貞森ひなた、柴原咲里、島田采佳、白石真由子、染谷有紀、武田瑞穂、田中友花里、當房侑貴、野原優衣、引本彩華、藤城善信、藤本千尋、増村光星、松浦孝弥、Lee Perez

プログラム内容

 

8月8日

イスラエル人参加者が到着。前日到着していたパレスチナ人参加者とともに清里高原キープ協会に向けて出発。途中都内で日本人参加者と学生ボランティアスタッフが合流し、夕方キープ協会に到着。翌日からのプログラム開始に備え、長旅の疲れを癒しました。

8月9日

午前中、聖ヨハネ幼稚園を訪問して園児たちと交流しました。森の中を一緒に散歩しながら、元気いっぱいの園児たちと触れ合いました。自然遊びに長けている園児たちから、森の中での遊び方を習い、いろいろな生きものを発見しては観察していました。英語が通じない子どもたちと向き合うことで、コミュニケーションの意味に気づくことができました。午後は、小西さんによるアイスブレーク。様々なゲームで盛り上がる中で、相手を感じる訓練ができ、まだぎこちなかった参加者同士でしたが、プログラム中一緒に過ごす仲間とチームビルディングができました。ポール・ラッシュ記念館では、キープ協会の創設者であるポール・ラッシュ氏が、日本人の仲間と信頼を築き、困難を乗り越えてその人生の中で達成した偉業について、ピース・プラクティショナーのローラさんから講義を受けました。参加者たちは、ラッシュ氏が示した"人と人の交流の大切さ"を学びました。その後は、石川さんによるネイチャープログラム。清里の清々しい森で、様々な生きものたちが織りなす生態系の大切さを学びました。川俣渓谷を歩き、清里の自然があってこその水であり、生態系にとって大事な水であることを学びました。帰りがけにとった様々な木の葉をスタンプにして、世界で一つしかないバッグを作りました。森は様々な木が共生して成り立っているという石川さんのメッセージが、参加者の心に残りました。

8月10日


小菅村に到着。昼食、自己紹介の後、寺子屋ツアーで寺子屋での暮らし方を学んだ後、皆で共同生活のルール作りを行いました。茶道体験では、絆プロジェクトのキー・ワードの一つである「一期一会」の意味を学びました。この日から、参加者全員が同じ大部屋で寝起きする約10日間の共同生活が始まりました。夜は、プログラム中のコミュニケーションの基本となる、ハート・コミュニケーション講義を行いました。「Love, Respect, Compassion」がプログラムを通しての一貫したアプローチとなりました。

8月11日

絆プロジェクトの基本理念を学ぶ「里山講座」を行いました。自然の循環の仕組み、里山の価値、小菅村についてなど、プログラム中の様々な体験活動を行うにあたって必要なことを学びます。担当の学生スタッフが凖備した大きくカラフルな里山の概念図を前に、参加者たちは「里山」の世界に引き込まれていきました。午後は、長作地区の散策です。4グループに分かれ、里山講座で学んだことを各ポイントで確認。ゴールは、毎年お世話になっている守重敏夫さん、広子さんご夫妻の畑です。そこでそばの種まき体験。慎重に畝を作る者、畝づくりも種まきもさっさと済ませる者、作業にも個性が現れます。これは絆プロジェクトが始まって以来続けられているアクティビティで、今回蒔かれたそばの種は、秋に日本人参加者とボランティアスタッフが収穫し、2018年の参加者がそば打ち、そばせん作りを体験し、また畑にまきます。そばによる「絆」の継承です。畑作業の後は、守重さんが丹精込めて育てた様々な野菜を採ってくださり、その場でほうばりました。採れたての野菜のおいしさに、守重さんの愛を感じました。

8月12日

午前中は源流体験。小菅に来て以来ずっと雨でしたが、この日は晴れ間も広がりました。きりっと冷たい水の中を歩くのは、参加者たちにとって新鮮で楽しい経験だったようです。毎年恒例となった大きな岩からのジャンプ。今年は参加者の一人が、恐怖心のため、なかなか飛び込むことができず30分経過。みんなからの声援と後押しを受けてようやく飛び込むことができました。豊かな森ときれいな水、自然の素晴らしさを肌で感じました。夜は、浴衣で橋立地区のお祭りに行きました。地区の方々が代々継承しているお神楽に、伝統の継承とコミュニティのつながりを感じました。

8月13日

様々な伝統の技を学ぶ日です。まず、各自が持ってきた着古した T シャツで、布草履の作り方を村の”先生”から教わりました。四苦八苦しながら、色とりどりのオリジナル草履を作り上げました。箸作り体験では、小菅伝統の箸の作り方で、多摩源流こすげの寺田さんの指導で挑戦。かんながけに苦労しながら、最後に焼きペンで名前やイラストを入れて完成。大事そうに持ち帰りました。そば粉を使ったせんべい作りにも挑戦。生地を丸める、焼型で焼く、焼印を押すという工程で、リズムとチームワークが必要です。焼きあがったそばせんの美味しさににっこり。自分たちで作った折り紙を入れ、家族への素敵なお土産になりました。
 

8月14日

役場の守重さんの案内で、小菅村の環境を守る取り組みについて学びました。白糸の滝で、滝にまつわる昔話を聞き、きれいな森と水を感じました。下水処理場では、多摩川の源流にある小菅村の責任として、下水を完全に浄化した水を川に戻している過程を見せていただきました。参加者たちは汚泥の匂いに顔をしかめつつも、その取り組みに感銘を受けていました。間伐された森が見える場所で、中川さんから小菅村の森林とその課題、取り組みについて説明していただきました。間伐は森を維持する上で必要なことであるにも拘わらず、労力と経費がかかってしまうため、人口減少と高齢化が進んでいる中では、企業の支援が不可欠だという現状に、特に日本人参加者からたくさん質問が出ました。午後は、林業廃棄物センターで、細川さんが、生ゴミを堆肥にして袋詰めするまでの全工程を、一つ一つ詳しく説明してくれました。その日の朝食で出た生ゴミをかくはん機に入れさせていただき、普段考えることもなかった、自分の出したゴミの行方を目の当たりにし、生ゴミを堆肥にすることでリサイクルになることを学びました。これらの作業を細川さんが一人でやっておられることに大変驚き、自分たちの知らないところで、環境を守るために働いてくださっている方がいることに感謝するしかありませんでした。その後、守重さんの森で間伐体験。慣れないノコギリを使う作業に、間伐が大変な作業であることを実感しました。"がんばれ"の声がけの中、交代で2本のヒノキを切りました。木が倒れそうな時は互いに声をかけあい、記念に持って帰るために倒した木を輪切りにする時は、協力しあっておさえるなど、参加者同士の絆が深まっていく様子が伺えました。

8月15日

恒例の奈良倉山登山でしたが、あいにく終始雨の中での登山となりました。山道がぬかるみ、参加者・スタッフともに転倒してしまう人が続出。沈みがちな雰囲気を、ボランティアスタッフとして参加したリー(イスラエルの参加者経験者)が歌やゲームで盛り上げてくれました。滑らないように手を差し出し合ったり、励まし合ったり、雨だったからこそ得られた達成感もありました。和食作りでは、卵焼き・厚揚げと野菜の煮物・酢のもの・鶏肉の味噌焼き・お吸い物を作りました。卵焼きは少し難しそうでしたが、みんなで綺麗な卵焼きを作りあげました。和食の味に馴染まない参加者もいましたが、和食を経験する良い機会になったようです。
 

8月16日

午前中は、今回みんなでマスターすることになった「恋ダンス」の練習。イスラエル、パレスチナの参加者もたちまち習得。その後はそば打ち体験。2016年の参加者が蒔いて、秋に日本人参加者や学生スタッフが収穫したそばを使ってのそばうちです。様々な太さのそばができましたが、守重さんが愛情をこめて育てた野菜のてんぷらと食べるそばに舌鼓を打っていました。そして、夕方からはホームスティ。村の方々のお宅で、忘れられない楽しい時間を過ごすことができました。

8月17日

参加者たちがホームスティから戻ってきました。横浜南ロータリークラブの方々にお越しいただき、流しそうめんをするための竹を組み、そばつゆを入れる竹のお椀を作ってくださいました。流しそうめんを楽しんだ後は、差し入れにいただいた大きなスイカでスイカ割。その後、横浜南ロータリークラブの橋本芳美さんと琴奏者の新保眞佐江さんのキーボードと琴でのコンサート。伝統の琴の音色とキーボードと歌声に聞き入り、花をテーマに選んでいただいた楽曲とその意味に様々な思いを感じていました。恋ダンスも、練習の甲斐あって成功、最後は、みんなで「上を向いて歩こう」を合唱してコンサートは終わりました。

8月18日

午前中は、新聞紙を利用しての新聞紙バッグ作り。目に見えるリサイクルとレジ袋削減の実践として、行動計画に取り入れる参加者も多かったです。午後は、小菅中学校が全校をあげて受け入れてくださっての交流プログラム。今年で3回目となりました。中学3年生が、小菅村や日本文化について英語で紹介した後、「ソーラン」を披露。橋立のお祭りで子どもたちが披露していたのを覚えていて、飛び入り参加する参加者もいました。とても気に入り、2日間の特訓でマスターしたほどです。その後、今回は、日本の伝統食である餅を通しての交流となりました。中学生が考えてくれた様々な餅の味を体験。あんこ、きなこ、磯辺焼き、ずんだなどいろいろなお餅の食べ方があることを知りました。教頭先生に案内いただいての校内見学は、イスラエルやパレスチナの学校とまったく違う日本の学校に興味津々でした。

8月19日

プログラムのまとめの日です。プログラム中様々な体験から学んだこと、得たことを自分のコミュニティで生かすために、各自のアクションプランを作りました。個性あふれるアクションプランが出来上がり、全員が発表して共有、お互いに拍手で励ましあいました。発表の後、一週間前に蒔いたそばの様子を畑に見に行きました。自分で蒔いた種が元気に芽を出している様子に全員が笑顔でした。午後は、全員での最後のシェアリング。コミュニケーション講座で使った、持ってきた赤ちゃんの頃の写真をそれぞれに返却しながら、全員が他の参加者全員に対して、メッセージを伝えあいました。

8月20日

小菅村での最後の日。朝から夜の村の方々との交流会に向けて、飾り付けや中東料理作りに励みました。今年も、ホストファミリーの方々、子どもたち、お世話になった村の方々がたくさんいらしてくださいました。一生懸命作った中東料理を味わっていただいた後、スタッフによる出し物、パレスチナの結婚式の伝統の踊り、イスラエルのフォークダンスの披露のあと、みんなで何度も練習した「恋ダンス」そして「ソーラン」を踊り、楽しい最後の夜になりました。

8月21日

小菅村を後にして東京へ。都内視察の後、フェアウェルパーティー。プログラムを振り返るスライドショーの後、修了証の授与と参加者からプログラムを振り返っての一言。ボランティアスタッフとして参加したリーも、スピーチをしてくれました。プログラム最後の夜、再会を期して参加者もスタッフも別れを惜しみました。

8月22日

日本人参加者が成田空港まで見送りに行き、イスラエル、パレスチナの参加者帰国。11回目の絆プロジェクトが無事終了しました。

関連の活動

 1) 講演会/報告会(2017年10月開催)
 2) イスラエル、パレスチナへのスタディーツアー(2018年3月開催)
 

参加者からのメッセージ

"小菅村の方々が、とても健康的な暮らしをされているということが一番印象的だった。すべてが手作りで、高齢の方でさえ、自然のために、次の世代のために、大変な仕事をしている。小菅の方々にとって、文化や伝統は大切で、次の世代に受け渡すために努力されていることがすごいし、そのことを忘れてはいけない。"
(イスラエル人参加者)


"これまで考えたこともなかった、日々の生活のいろいろなことに、もっと感謝しないといけないことを学んだ。今、常に意識するようにしている。広い見方で物事を考えるようになったし、次の世代のことや、まわりの人たちのことを意識するようになった。また、自分の体に入れる食べ物のことに、着目するようになった。もっと努力し、多くの労力を使えば、その分成果が得られること、愛情をもって接することで、思うよりも多くのつながりをもてることを学んだ。"
(パレスチナ人参加者)


"このプロジェクトでの体験を通して、自然と人間がつながっていて、お互いに支え合っていることに気づくことができた。この絆は、私たちの次の世代にもつなげていかなければならない、とても重要なものだと思う。また、イスラエル、パレスチナの参加者たちと築いていく絆の大変さと大切さをすごく身にしみて感じた2週間だった。よく考えてみると、いろいろな絆に囲まれているなと思った。"
(日本人参加者)


"初日は、みんな緊張していて、それぞれのグループで固まりがちだった。しかし、しばらく経つと、ゆっくり絆が築かれていったと思う。2週間経った今、私たちの関係は大きく変わったし、みんな、それぞれ素晴らしい人たちだった。"
(イスラエル人参加者)


"私たちは、それぞれが違うバックグラウンドや文化を持っていたが、全員が一緒に活動できたと思う。自然とのつながりを感じ、感謝しているし、守っていきたいと思う。スタッフのみなさん、参加者全員と、姉妹のようになることができ、たくさん友達ができた。"
(パレスチナ人参加者)


"国や地域、年齢は違っても、様々な体験や食事を共にし、同じ部屋で寝ることで、同じ出来事を共有した「仲間」であるという絆が生まれたと感じた。また、秘密を共有したり、お互いの言語を学んだりしたことで、その絆がより深まったと感じた。"
(日本人参加者)